1. はじめに:「見てもらえない広告」の時代に何が変わったか
SNS広告を出しても、ユーザーは0.5秒でスクロールして通り過ぎる。インフルエンサーに依頼しても、フォロワーには「いつもの案件投稿」として見られてしまう。バナー広告はそもそも目に入らない——。
「どうやって見てもらうか」の問いは、デジタルマーケティングにおける永遠の課題です。そのなかで、ここ数年急速に存在感を増しているのが「縦型ショートドラマ」です。
TikTokやInstagram Reelsを中心に、縦型のショートドラマがコンテンツとして日常に浸透し始めました。そしてそれは、企業のブランドコミュニケーションにも大きなヒントを与えています。
この記事では、なぜ今の時代に縦型ショートドラマがブランドに効くのか、その背景と理由を整理します。
2. 「ドラマ」が広告と異なる理由
まず、ドラマという形式が持つ本質的な強みを理解しておく必要があります。
広告は「商品を売るためのメッセージ」です。一方、ドラマは「登場人物の物語」です。
ユーザーは広告を「見させられるもの」として認識します。しかしドラマは「見たいもの」として受け取られます。この能動性の違いが、記憶への残り方や感情への影響に大きな差をもたらします。
人間の脳は、感情が動いた体験をより強く記憶するという性質を持っています。笑ったとき、共感したとき、驚いたとき——そういった感情の揺れとともに体験したブランドや商品は、記憶に深く刻まれます。
縦型ショートドラマは、この「感情とともにブランドを体験させる」ことができる唯一に近い動画フォーマットです。
3. なぜ「縦型」「ショート」なのか
縦型ショートドラマの特徴は、単に短い縦向きの動画ではありません。スマートフォン視聴を前提とした、全く異なる「体験設計」を持つコンテンツです。
スマートフォンの持ち方に合わせた設計
スマートフォンを縦に持ったまま視聴できる縦型フォーマットは、横型動画よりも「視聴の摩擦」が圧倒的に少ない。デバイスを回転させる必要がなく、タイムラインをスクロールする延長線上でそのまま見続けられます。
「最初の3秒」で勝負が決まる設計
縦型プラットフォームでは、最初の数秒でスキップされるかどうかが決まります。ショートドラマはこの「最初の3秒」に強烈なフックを仕込む設計を前提にしています。謎かけ、感情の揺さぶり、続きが気になる状況の提示——視聴者を引き込む構成が最初から組み込まれています。
「1〜3分」という黄金の尺
長すぎず、短すぎず。1〜3分という尺は、感情の起伏を設計しながら、ストーリーとして完結させるのにちょうどよい長さです。この尺でブランドや商品を「物語の一部」として自然に組み込むことができます。
4. 縦型ショートドラマが「ブランドに効く」4つの理由

理由① 広告らしく見えない
ショートドラマ仕立てのブランドコンテンツは、ユーザーの「これは広告だ」というフィルターをくぐり抜けやすい形式です。物語として展開するため、ユーザーはコンテンツとして受け取り、最後まで視聴する確率が高まります。
視聴完了率は、通常のバナー広告や説明型動画と比べて高くなる傾向があります。最後まで見てもらえるということは、ブランドのメッセージが届いているということです。
理由② 共感がブランド好意度を高める
ドラマには登場人物がいます。視聴者はその人物に共感し、感情移入します。「あるある」と思える日常の悩み、うまくいかない状況、それでも前を向くシーン——そういった共感ポイントの中にブランドや商品を自然に登場させることで、「このブランドは自分の世界観に合う」という感覚が生まれます。
共感を経由したブランド体験は、一方的な広告訴求よりも、長期的なブランド好意度の形成に貢献します。
理由③ 拡散・シェアが起きやすい
感情が動いたコンテンツは、人がシェアしたくなります。「面白かった」「泣けた」「わかる」という感情が、拡散の動機になります。
通常の広告を自発的にシェアするユーザーはほぼいません。しかしドラマとして見た体験は、「これ見て」と誰かに伝えたくなる体験になり得ます。オーガニックな拡散は、広告費では買えない信頼性を持ちます。
理由④ 素材として複数施策に転用できる
制作したショートドラマは、SNS投稿・SNS広告・WEBサイト掲載・ECサイトコンテンツなど、複数の場面で転用できます。一度の制作コストで複数の接点をカバーできるため、費用対効果が高い施策になります。
特に、ドラマの「15秒カット版」を広告として配信し、「続きはアカウントで」という設計にすることで、フォロワー獲得にもつながります。
5. どんなブランド・商品に向いているか
縦型ショートドラマは万能ではありません。向いているケースと、そうでないケースがあります。
向いているケース
・感情に訴える商品・サービス:
美容、健康、食品、日用品など、「使ってみたら生活が変わった」という体験を描きやすい商材
・ターゲットが明確なブランド:
主婦・ママ層、働く20〜30代など、共感ポイントを設計しやすいターゲット層を持つブランド
・世界観を大切にしているブランド:
価格訴求より「このブランドが好き」という共感で選ばれたいブランド
・SNSでの認知拡大を狙っているブランド:
Instagram・TikTok・YouTubeショートを主な接点にしているブランド
向いていないケース
・BtoBサービスなど、感情よりも論理的な説明が求められる商材
・価格の安さや機能スペックだけで選ばれる商品
・制作クオリティへの投資が難しいケース(ドラマは演出・脚本・出演者の質が成果に直結するため)
6. 「説明動画」と「ショートドラマ」の違い
商品説明動画
商品の機能・成分・使い方を説明することが目的。情報を伝えるが、感情を動かす力は弱い。
ショートドラマ
登場人物の物語の中に商品が自然に登場する。情報よりも先に感情が動く。商品への印象が「ストーリーの体験」とセットで記憶される。
この違いは、ユーザーの受け取り方に大きな差をもたらします。説明動画は「なるほど」で終わりますが、ショートドラマは「なんかいいな」「気になる」という感情的な反応を生み出します。
7. 芸人や役者を起用することの意味
縦型ショートドラマの効果を高める要素の一つが、出演者の力です。
芸人を起用したドラマは、「クスッと笑える瞬間」や「テンポの良いリアクション」が生まれます。これにより、視聴の途中でスキップされるリスクが下がり、最後まで見てもらいやすくなります。
役者を起用した場合は、感情表現の繊細さや「間」の使い方によって、共感の深さが生まれます。特に、主人公が日常の壁にぶつかりながら前を向くシーンは、視聴者の心を動かしやすい構造です。
脚本だけでは表現しきれない「人間味」は、出演者のキャラクターや即興性から生まれます。ブランドや商品の世界観に合う出演者を選ぶことが、ショートドラマの成否を左右する重要な判断です。
8. まとめ:「見てもらえる時代」から「感じてもらえる時代」へ
縦型ショートドラマがブランドに効く理由は、「見てもらえる」からだけではありません。「感情が動く」から効くのです。
広告が溢れ、ユーザーのフィルタリングが高度化した今の時代、ブランドが選ばれるためには「情報を届ける」ことより「感情を動かす」ことが重要になっています。
縦型ショートドラマは、その「感情を動かす」コンテンツとして、企業のプロモーションに新しい可能性を開いています。
マスデジタルでは、オリジナルドラマブランド「サンナナ」で培ったショートドラマの制作ノウハウを活かし、企業向けのショートドラマ制作をご支援しています。「どんな内容が自社に合うか分からない」という段階からでも、お気軽にご相談ください。
この記事はマスデジタルが提供するコラムです。ショートドラマ制作・縦型動画マーケティングのご相談はお問い合わせフォームよりどうぞ。

Written by
田浦 典幸
大学卒業後、GMOインターネット、フルスピードにて営業および新規事業の立ち上げに従事。デジタル領域を軸に事業推進の経験を積む。その後、株式会社J・Gripにて取締役社長に就任。事業拡大、組織運営、デジタルマーケティング領域の強化を手がける。
2020年1月、合同会社2SCを創業。
BtoBマーケティング、インサイドセールス、採用広報、インナーブランディングなど、企業成長に必要な領域を横断したコンサルティングを提供しながら、マーケティング・リサーチ事業会社のマーケティング部門を担当。
2023年には、パートナー2名と共にインフルエンサー事業会社を創業し、SNS・KOL領域の事業を拡大。2024年には株式会社マスデジタルを創業し、マーケティング戦略とクリエイティブ制作を一体で支援する体制を構築。
現在は、デジタルを軸とした総合的なマーケティング・営業戦略の設計から実行までを担い、企業の成長に最適なソリューションを提供し続けている。
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