採用やインナーブランディングにショートドラマを使うときの設計ポイント

1. はじめに:「会社説明スライド」より「一本のドラマ」が伝えるもの
採用活動において、自社の魅力を伝えることはどの企業にとっても課題です。会社説明会のスライドを丁寧に作り込んでも、「なんとなく理解した気がする」という感想で終わってしまうことは少なくありません。
インナーブランディングでも同様です。企業の理念や行動指針を冊子やテキストで伝えても、社員が「自分ごと」として受け取るかどうかは別の話です。
テキストやスライドが「頭で理解させる」アプローチだとすれば、ショートドラマは「感情を通じて体感させる」アプローチです。この違いが、記憶の残り方と行動への影響に大きな差をもたらします。
2. なぜ採用・インナーブランディングにショートドラマが有効なのか
理由① 「企業の雰囲気」は言葉で説明できない
「風通しの良い職場です」「チャレンジを大切にしています」という言葉は、どの企業も使います。差がつきません。
ショートドラマなら、「実際に社員がどんな会話をしているか」「困ったときにどう助け合うか」「失敗したときにどんな空気が流れるか」を、セリフや表情・シーンを通じて「感じてもらう」ことができます。
理由② 「共感」が応募・定着の動機になる
就活生が「この会社に行きたい」と感じる瞬間の多くは、「自分がここで働いているイメージが持てた」という共感・感情移入から生まれます。
インナーブランディングにおいても、「この会社の価値観が好き」という感情的なつながりが、社員のエンゲージメントや定着率に影響します。
理由③ SNS・動画プラットフォームを通じた自然な拡散
採用ターゲットが20〜30代の若年層であれば、TikTokやInstagram Reelsを通じた発信は、採用メディアへの広告出稿より「リーチの自然さ」という点で優れています。
「この会社の採用動画、なんか面白かった」「この会社気になる」というSNSでの口コミは、採用ブランディング上の大きな資産になります。
3. 採用向けショートドラマの設計ポイント

ポイント① 主役は「就活生と近い人物」にする
採用向けドラマの主役は、ターゲットとなる就活生が感情移入しやすい「等身大の若手社員」が基本です。
「入社1〜3年目、最初は不安だったが〇〇な体験を通じて成長した」というストーリーラインは、就活生が「入社後の自分」を重ねやすく、「ここで働くイメージ」を持つきっかけになります。
完璧なキャリアを歩む「理想の社員」より、悩みながらも前に進む「リアルな社員」を描く方が、共感を生みやすい。
ポイント② 企業の「価値観」をシーンで表現する
「チームワークを大切にしています」という言葉の代わりに、「困っている同僚を誰かが自然に助けるシーン」を描きます。
企業の価値観・文化は、「宣言する」より「シーンで見せる」方が、視聴者の信頼感が高まります。
ポイント③ 「仕事のリアル」を正直に描く
「楽しい!やりがいがある!仲間が最高!」だけを描いた動画は、就活生から「本当にそうなの?」という不信感を持たれるリスクがあります。
「最初はうまくいかなかった」という正直な側面を含みながら、「それでも続けてよかった理由」を描く方が、リアリティと信頼感が生まれます。
ポイント④ 尺とプラットフォームを使い分ける
・TikTok・Instagram Reels:60秒〜3分。最初の数秒でフックをつくる
・採用サイト・会社説明会:3〜5分。自社の世界観をじっくり伝える
・SNS広告:15〜30秒。「気になる会社だ」という印象づけを目的にする
同じドラマ素材から複数バリエーションを制作することで、各プラットフォームに最適化しながらコストを抑えられます。
4. インナーブランディング向けショートドラマの設計ポイント
ポイント① 「社員が主役」のドラマにする
インナー向けドラマは「この会社で働く自分たち」が主役です。実際に社員が登場するか、社員の日常を模した登場人物が出てくることで、「自分たちの話」として受け取られます。
ポイント② 「価値観のジレンマ」を描く
「会社の価値観と現場のリアルの間で葛藤する場面」は、インナーブランディングのドラマで効果的な題材です。
葛藤と解決のプロセスを描くことで、企業の価値観の「深さ」が伝わります。
ポイント③ 研修・オンボーディングのコンテンツとして設計する
「この会社で働くとはどういうことか」「先輩はどんな失敗をしてどう乗り越えたか」——テキストや講義形式で伝えるよりも、ドラマで見た体験の方が、記憶への定着と自分ごと化が高まります。
5. 採用・インナー向けドラマの制作上の注意点
実在の社員を起用するか、役者を起用するか
実在の社員出演のメリット
:リアリティと信頼感が高まる、社員のエンゲージメント向上にも貢献する
実在の社員出演のデメリット
:演技の質が安定しない、退職後の映像管理が必要になる
役者・芸人起用のメリット
:演技品質が安定する、撮影効率が高い
役者・芸人起用のデメリット
:「本当の社員じゃない」という違和感が生じる場合がある
「役者を主役に据えつつ、社員が脇役として自然体で出演する」という組み合わせが、クオリティとリアリティのバランスを取る有効な手段です。
公開範囲の設計
インナーブランディング向けのドラマは、外部公開するものと社内限定のものを分けて制作・管理します。社内の業務プロセスや個人情報が含まれる場合、外部公開時のリスク管理が必要です。
6. まとめ:「見せる採用広報」から「感じてもらう採用広報」へ
・等身大の人物を主役に、共感できる物語を描く
・価値観はセリフではなくシーンで表現する
・仕事のリアルを正直に描き、信頼感を高める
・尺とプラットフォームを使い分け、多様な接点で届ける
採用ターゲットが「この会社で働くイメージが持てた」と感じる瞬間を、ドラマというフォーマットで設計することが、採用ブランディングにおけるショートドラマの本質的な価値です。
マスデジタルでは、採用向け・インナーブランディング向けのショートドラマ制作も対応しています。「どんな内容が自社に合うか分からない」という段階からでも、ぜひご相談ください。

Written by
田浦 典幸
大学卒業後、GMOインターネット、フルスピードにて営業および新規事業の立ち上げに従事。デジタル領域を軸に事業推進の経験を積む。その後、株式会社J・Gripにて取締役社長に就任。事業拡大、組織運営、デジタルマーケティング領域の強化を手がける。
2020年1月、合同会社2SCを創業。
BtoBマーケティング、インサイドセールス、採用広報、インナーブランディングなど、企業成長に必要な領域を横断したコンサルティングを提供しながら、マーケティング・リサーチ事業会社のマーケティング部門を担当。
2023年には、パートナー2名と共にインフルエンサー事業会社を創業し、SNS・KOL領域の事業を拡大。2024年には株式会社マスデジタルを創業し、マーケティング戦略とクリエイティブ制作を一体で支援する体制を構築。
現在は、デジタルを軸とした総合的なマーケティング・営業戦略の設計から実行までを担い、企業の成長に最適なソリューションを提供し続けている。
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